開咬とは、前歯が噛み合っていない状態のことです。その原因は、下顎面が長い面長な骨格などの先天的要因から、口腔周囲の習癖(指しゃぶりや嚥下時に舌を前に出すなど)、奥歯が過度な萌出などが挙げられます。
開咬を治療する際には、口腔周囲の習癖の改善のためにMFT(筋機能訓練療法)を実施することは必須ですが、並行して、矯正治療により舌が出にくい構造(噛み合わせ)を構築していかなければなりません。
多くの場合、前歯が噛み合わなくなっている状態を改善するためには、楔となっている臼歯の圧下が必要となります。この圧下という動きが歯の動きの中で最も難しく、絶対的な圧下を行うためには、矯正用アンカースクリューをアンカレッジと使用する方法が最も有効とされています。
以下に示す患者さんは、上の臼歯の過度な萌出をしているために、前歯が開咬となっています。原因となっている上の臼歯の圧下を行うために矯正用アンカースクリューを使用しました。上の臼歯が圧下されたことで、奥の楔が抜けて、下顎が前上方に回転して、開咬が改善していることがわかります。
主訴:前歯で噛めない
年齢:30代、男性
装置:上下リンガルブラケット(クリッピーL)
治療方針:開咬の改善、矯正用アンカースクリューを使用した上顎大臼歯の圧下
抜歯部位:上下顎第三大臼歯
リスクおよび副作用:歯根吸収(歯の根が短くなる症状)
歯肉退縮(歯茎が下がる症状)
アンキローシス(歯と骨が癒着し歯が動かない状態)
歯髄壊死(歯の神経が失活した状態)
顎関節症状(顎の痛み)
治療期間:約2年半
リテーナー:上下リンガルリテーナー、上下アップラウンドリテーナー
費用:診断料 38,500 円、装置料 97900 円、調整料 5,500 円/月(24回)、保定料 44,000 円段落
また、アライナー矯正装置を使用することでも、臼歯の圧下が可能です。なぜなら、アライナーは歯の咬む面を覆うので、圧下の力をかけることができるからです。シビアでは無い開咬ケースに関しては、臼歯の圧下と前歯の圧下を組み合わせることにより、矯正用アンカースクリューを使用することなく開咬の治療を行うことができます。これは、患者さん取っては非常に負担が少ない方法です。
主訴:前歯で噛めない
年齢:20代、女性
装置:アライナー矯正装置(インビザライン )
治療方針:開咬の改善、アライナーによる上顎大臼歯の圧下
抜歯部位:上下顎第三大臼歯
リスクおよび副作用:歯根吸収(歯の根が短くなる症状)
歯肉退縮(歯茎が下がる症状)
アンキローシス(歯と骨が癒着し歯が動かない状態)
歯髄壊死(歯の神経が失活した状態)
顎関節症状(顎の痛み)
治療期間:約1年
リテーナー:上下リンガルリテーナー、上下ビベラリテーナー
費用:診断料 38,500 円、装置料 704,000 円、調整料 5,500 円/月(24回)、保定料 44,000 円段落
開咬治療は治療が難しいだけでなく、は治療後の後戻りのリスクが高いかみ合わせです。着脱式のリテーナーを使っていただくだけでなく、矯正用アンカースクリューを残して一定期間固定に使用したり、MFTも継続していただく場合があります。
開咬は、前歯でものを噛みきれないだけでなく、奥歯に過度な負担がかかるのですので、開咬で悩まれている方は、当院まで一度ご相談に来てください。