今回、アライナー矯正装置(以下、インビザライン)を用いて治療を行なった症例の解説をさせていただきます。
インビザラインというと、すごく特殊な装置というイメージですが、歯を動かす装置ということは他の装置と一緒で、大きく診断や治療計画が異なるわけではありません。
当然、矯正専門の精密検査及び症例分析を綿密に行う必要があります。
カウンセリングの説明などに使われるアウトカムシュミレーション(I teroでスキャンした画像をもとに瞬時に歯を配列するソフト)は、非常にわかりやすく、患者さん受けはいいのですが、実際には、前歯の前後的位置や術後の口元や横顔、歯槽骨の幅、骨格などは全く反映されてないため、絵に描いた餅で、当院では説明のためのツールとしてはなかな難しいなと感じています。
それでは、歯を抜かずに治療を行なった患者様の解説をしていきます。
この患者さんは、飛び出た右上の前歯と下の歯のガタガタを主訴に当院に来院されました。
まずはセファロ分析を行い、この方の骨格パターンを確認します。骨格により、治療目標や治療メカニクスが変わるからです。
上下の前歯の最終目標を設定します。前歯が前方に出れば、当然口元が突出してしまいます。できるだけ前歯を中に入れたいという希望がありましたので、上の前歯を後方移動させることで、下の前歯と咬合させることにしました。
上の前歯を内側に1.0mm後方に入れるためのスペースとガタガタを改善させるためにはどれだけのスペースが必要かを計算し、それを確保するために、上下歯列の拡大とIPRを行うことにしました。
先ほどの前歯の前後的位置や歯列の拡大量やIPR量を反映させたシュミレーション動画です。31枚のアライナーを使用して治療を開始することになりました。このシュミレーション作成の際に、実際に歯を動かす順番についても設定していきます。前歯の移動する量をできるだけ少なくするために、歯列の拡大を先行して行うことにしました。
治療期間は12ヶ月で、合計40枚のアライナーを使用しました。
上下前歯の正中は一致し、叢生は改善され、臼歯の咬合も緊密な状態となっています。
術前後のレントゲン写真の重ね合わせです。上の前歯は後方に入り、前歯が前に出ることなくガタガタが改善されたことが確認できました。
インビザラインの場合、歯を抜かない場合でも、前歯が前方に出にくいいというメリットがあります。この患者さんにとっては、インビザラインのこの特徴が良い結果につながりました。
以下には矯正治療を行う上でのリスクやインビザラインの説明を記載しております。
リスク及び副作用:
歯根吸、歯肉退縮、アンキローシス、歯髄壊死、顎関節症状
※写真の使用は患者様から同意を頂いております。
マウスピース型カスタムメイド矯正装置(インビザライン)
施術内容:カスタムメイドで作成された透明なマウスピースタイプの装置を、定期的に交換しながら少しずつ歯に適切な力をかけて、歯並びを治す歯列矯正治療です。
費用:検査・診断料¥38,500、基本料金¥704,000〜¥814,000、調整料¥3,300/月、抜歯¥5,500/本、保定装置¥22,000(税込)う診療(保険外診療)となります。症例によりますが、6ヶ月〜3年程度の治療期間が必要です。他の矯正歯科治療と同様に、セルフケアを怠ると、虫歯や歯周病を発症する場合があります。マウスピース交換後は、一時的な鈍痛や咬合痛を発症する場合があります。不正咬合の状態によっては、適応しない場合があります。当院の指示に従わない使用方法では歯が動かない場合があります。動的治療終了後は、保定装置を装着する必要があります。
医薬品医療機器等(薬機法)に関する記載事項:
・歯科用インビザライン矯正装置は、日本国内において薬機法未承認の矯正装置であり、医薬品副作用被害救済制度の対象外となる場合があります。
・マウスピースに使用している材料自体は、日本の薬事承認を取得しています。
・「インビザライン」は米国アライン・テクノロジー社の製品の商標であり、製品等は全て関連企業のインビザライン・ジャパン社より入手しております。
・日本国内においては、同様の医療機器が薬事承認を得ております。
・「インビザライン」は、世界100カ国以上の国々で提供され、これまでに1100万人を超える患者さんたちが治療を受けています。(2021年12月時点)