子どもの矯正治療(第1期治療)は、本当に必要なのか?
当院では、「一時的な審美改善希望」や「咬めなくて困っている」「永久歯が生えてこない」といった内容でない場合は、積極的には小児矯正治療を勧めておりません。ですから、他院で「すぐ矯正治療を始めた方が良い」と言われたケースでも、当院では「しばらく待った方が良い」と説明する場合があります。
子供の矯正治療は歯並びの時期によって2段階に別れています。まだ乳歯と永久歯が混ざっている混合歯列期という時期に行う矯正治療を【1期治療】と呼び、これが小児矯正治療にあたります。一方、その後、あごの成長がある程度ピークを迎え全て永久歯が生え変わった後に行う全体の矯正治療を【2期治療】と呼びます。歯並びに悩むお子さんの全員が、小学生の1期治療のみで終われば嬉しいのですが、実際は小児矯正のみで歯並びが80点以上に行くケースは1/4程度と考えていただくと良いです。それを考えれば、1期治療は、あえて行わずに2期治療から治療をすることをお勧めする場合もあります。
「子供の矯正治療はできるだけ早くから始めた方が良い」という考え方もあるのですが、当院は子供の矯正治療はできるだけ期間が短い方が良いという考え方です。そのため、早期からスタートせず戦略的待機という事も行います。さらに症例の内容だけでなく、家庭環境・お子さんのキャラクターも見て、ベストな治療に介入する時期を検討します。子供の頃から長期に渡り、治療を行うと、子供のストレスになることと、協力度が年々低下し、虫歯のリスクも増加することも理由の一つです。
中には早くに治療を始めないと、歯肉にダメージが出たり、正常な歯の生え替わりが起こらないケースもあります。また、お子さん自身が見た目が悪い事をコンプレックスに感じているケースもあります。このような場合は、治療期間は長くなる事をご承知の上、小学生から治療を始める事をお勧めする事もあります。つまり、適切な検査および診断を行い、いつから治療を開始すべきかを見極めることが重要です。
以下に示す症例は、積極的な子供の矯正治療をせずに、5年間の経過観察を行なったのちに、2期治療にて矯正治療を開始した方です。初診時の写真からは、歯がとても大きく、歯が並びきれない状態で、お顔の写真からは、口を閉じた時にオトガイ部に緊張があり、口元が突出していました。子供の時に、顎の幅を広げたとしても、歯が並ばないとこと、口く閉じずらさは、改善しないと判断し、1年に1度の経過観察を行いながら、治療の開始時期について相談していきました。
5年後の写真です。永久歯列が完成し、初診時よりもガタガタが圧下していて、下の歯の奥歯も傾斜している状態となっていました。中学生になったことで、小学生の時よりも、歯並びを治したいというモチベーションも高いため、治療の協力も得られやすいと判断し、治療を開始しました。
小臼歯を4本抜歯し、抜歯したスペースを利用して上下歯列ののガタガタを配列したのちに、前歯の後方移動を行いました。
治療終了後は、口元の緊張もなくなり、リラックスして口が閉じれるようになりました。また、上下歯列のガタガタも改善し、良好な噛み合わせとなっています。
この方は、子供の矯正治療を行わないことが正解だったのですが、もちろん、Ⅰ期治療が必ず必要になる方もいらっしゃいます。また、ブログにてそのようなケースについても解説させていただきます。
・10代 女性
・装置:ラビアル(表側装置)
・施術内容:歯の表側にブラケットを装着し、ワイヤーを用いて、歯並びを治す歯列矯正治療です。
・抜歯部位:上下顎両側4番
・治療期間:2年0ヶ月
・リテーナー:上フィックスリテーナー、ベックタイプリテーナー 下フィックスリテーナー
・副作用・リスク:自費診療(保険外診療)となります。他の矯正歯科治療と同様に、セルフケアを怠ると、虫歯・歯周病を発症する場合があります。不正咬合の状態によっては、適応しない場合があります。以前に打撲したことのある歯は歯と骨が癒着している可能性があり、歯を移動させることが困難な場合や抜歯が必要な場合があります(アンキローシス)。歯が動く時に、まれに歯の根の先が溶け短くなる場合があります(歯根の吸収)。歯の移動や咬合感傷により歯の神経が失活してしまう場合があります(歯髄失活・歯冠変色)。歯を動かす際に歯肉や骨が薄い部分は歯茎が下がる場合があります(歯肉退縮)。歯を動かす際噛み合わせが変わるため、まれに音がしたり痛くなったりする場合があります。動的治療終了後は、保定装置を装着する必要があります。
※写真の使用は患者様から同意を頂いております。
費用:検査・診断料¥38,500、基本料金¥649,000~¥726,000、調整料¥5,500/月、抜歯¥5,500/本、保定装置¥44,000(税込)