子供の矯正治療で使用されるマウスピース矯正装置には、主に以下の2種類があります:
- 上下一体型マウスピース矯正装置(例:プレオルソ、ムーシールド)
- 子供用アライナー矯正装置(例:インビザラインファーストなど)

それぞれの特徴や効果について詳しく解説します。
上下一体型マウスピース矯正装置
特徴
- 夜間のみの使用が一般的で、コストが比較的安価。
- 既製品のため、歯列とのフィット感に「遊び」があり、装着時に違和感を覚えることもあります。
※ 使用を続けることで慣れ、トラブルは減少します。 - 鼻呼吸ができないお子様(鼻炎など)には適応外です。
適応症例と当院での使用方法
上下一体型装置は、特定のケースで効果を発揮します。当院では以下の場合に使用しています:
- ムーシールド
- 乳歯列期(4〜6歳)の前歯部反対咬合(前歯の逆の噛み合わせ)
- プレオルソ
- 乳歯列期(4〜6歳)の前歯部反対咬合
- 混合歯列期(6〜7歳)の前歯部反対咬合(ガタガタのない場合)
- 混合歯列期(6〜7歳)の上顎前突(ガタガタのない場合に適応し、下顎骨の前方成長を誘導)


注意点
- 既製品であるため、前歯にガタガタがある場合は適切な装着が難しく、治療効果が限定的です。
- 最も効果が期待できるのは、前歯部反対咬合のケースです。
子供用アライナー矯正装置
特徴
- 個別の歯列に合わせたカスタムメイド製品。
※ 歯列をスキャンし、デジタルで治療計画を立てて作成します。 - 完全に歯列にフィットするため、装着中に外れる心配はありません。
- 使用時間は1日15〜18時間程度が推奨されています。学校での使用が難しい場合は、自宅での徹底管理が重要です。
適応症例と当院での使用方法
- 適応時期:上下4前歯と6歳臼歯が萌出し、側方乳歯がすべて残存している時期(7〜9歳ごろ)。
- 適応症例:
- 軽度〜中等度の前歯部叢生(歯列を拡大し配列を改善)
- 前歯部反対咬合(前歯の傾き調整)
- 上顎前突(下顎の前方成長促進)












注意点
- 側方乳歯が抜け始めるとフィットが悪くなり、治療効果が低下する可能性があります。そのため、適切な時期に治療を開始することが重要です。
結論
上下一体型マウスピースと子供用アライナーは、それぞれ異なる特徴と適応範囲があります。
- 上下一体型は特定の症例(前歯部反対咬合)に有効で、コストパフォーマンスも高いですが、適応範囲は限定的です。
- 子供用アライナーはカスタムメイドのため、幅広い症例に対応可能で、治療計画も柔軟に調整できます。
お子様の歯並びや生活スタイルに合わせて、最適な装置を選択することが大切です。治療開始のタイミングについても、専門医と十分に相談してください。
以下が症例の解説になります。
叢生ケース①
・8歳女性
・装置:インビザラインファースト(上下歯列を拡大して前歯部を配列)
・抜歯部位:非抜歯
・治療期間:7ヶ月
・リテーナー:上下フィックスリテーナー 、上下クリアリテーナー
・リスク及び副作用:
カリエス、歯根吸、歯肉退縮、アンキローシス、歯髄壊死、顎関節症状
叢生ケース②
・8歳男性
・装置:インビザラインファースト(上下歯列を拡大して前歯部を配列)
・抜歯部位:非抜歯
・治療期間:12ヶ月
・リテーナー:下フィックスリテーナー 、上下クリアリテーナー
・リスク及び副作用:
カリエス、歯根吸、歯肉退縮、アンキローシス、歯髄壊死、顎関節症状
前歯部反対咬合ケース
・7歳男性
・装置:インビザラインファースト(上顎前歯を唇側傾斜、下顎前歯を舌側傾斜させて反対咬合を改善。)
・抜歯部位:非抜歯
・治療期間:8ヶ月
・リテーナー:下フィックスリテーナー 、上下クリアリテーナー
・リスク及び副作用:
カリエス、歯根吸、歯肉退縮、アンキローシス、歯髄壊死、顎関節症状
上顎前突ケース
・7歳男性
・装置:インビザラインファースト(上下前歯部の叢生後に、下顎骨の前方誘導)
・抜歯部位:非抜歯
・治療期間:8ヶ月
・リテーナー:下フィックスリテーナー 、上下クリアリテーナー
・リスク及び副作用:
カリエス、歯根吸、歯肉退縮、アンキローシス、歯髄壊死、顎関節症状
マウスピース型カスタムメイド矯正装置(インビザライン)
施術内容:カスタムメイドで作成された透明なマウスピースタイプの装置を、定期的に交換しながら少しずつ歯に適切な力をかけて、歯並びを治す歯列矯正治療です。
費用:検査・診断料¥38,500、基本料金¥440,000、調整料¥3,300/月
副作用・リスク:自費診療(保険外診療)となります。症例によりますが、6ヶ月~3年程度の治療期間が必要です。他の矯正歯科治療と同様に、セルフケアを怠ると、虫歯や歯周病を発症する場合があります。マウスピース交換後は、一時的な鈍痛や咬合痛を発症する場合があります。不正咬合の状態によっては、適応しない場合があります。当院の指示に従わない使用方法では歯が動かない場合があります。動的治療終了後は、保定装置を装着する必要があります。
医薬品医療機器等(薬機法)に関する記載事項:
・歯科用インビザライン矯正装置は、日本国内において薬機法未承認の矯正装置であり、医薬品副作用被害救済制度の対象外となる場合があります。
・マウスピースに使用している材料自体は、日本の薬事承認を取得しています。