SAGA EKIMAE
ORTHODONTICS
佐賀駅前矯正歯科
【 お問い合わせ 】TEL.0952-37-3527

下顎骨のオートローテーションを利用した開咬治療

2026.03.03

― 臼歯圧下による垂直的コントロール ―

開咬治療では、単に歯を動かすだけでなく、顎位や顎骨の回転をどのようにコントロールするかが重要になります。
本稿では、下顎骨のオートローテーションを利用した開咬治療について、症例を交えて解説します。


下顎骨のオートローテーションとは

下顎骨のオートローテーションとは、臼歯部を圧下することにより、下顎骨が下顎頭を中心として前上方へ回転する現象を指します。

ただし、実際の臨床では、下顎骨は完全に下顎頭(Condylion)を中心として回転するわけではありません。
先行研究では、オートローテーションの実際の回転中心は、平均して Condylion から後方約7.4mm、下方約16.9mm に位置することが報告されています。

この理由として、

  • 顎関節構造や靱帯の個人差により、下顎の自由な回転が制限されること
  • オートローテーションの過程で咬合干渉が生じ、下顎位がわずかに偏位すること

などが関与していると考察されています。


下顎骨オートローテーションによる治療効果

このような回転が生じることで、

  • 前歯部の被蓋の改善
  • 下顔面高の減少
  • 顎位および咬合の安定性の向上

といった効果が得られ、骨格的要素を伴う開咬症例において有効な治療戦略となります。


開咬がもたらす機能的・長期的リスク

開咬とは、前歯が咬合していない状態を指します。

前歯は食物を噛み切る重要な役割を担っており、開咬があると

  • 咀嚼効率の低下
  • 奥歯への過剰な咬合負担

が生じます。

その結果、
補綴治療の必要性の増加や歯周組織の破壊が進行しやすくなり、長期的な口腔内環境の悪化につながる可能性があります。


開咬治療の基本的な3つのアプローチ

開咬治療は、大きく以下の3つに分類されます。


前歯を挺出する方法

前歯を垂直的に挺出させ、被蓋を獲得する方法です。

特徴

  • 前歯の位置変化によって比較的シンプルに被蓋を得ることが可能
  • 前歯の露出量が増えるため、前歯が見えにくい症例では審美的改善が期待できる

注意点

  • もともと歯肉露出の多い症例では、ガミースマイルが強調される可能性がある
  • 骨格的開咬では後戻りリスクが高くなる場合がある

上顎臼歯を圧下する方法

(下顎骨のオートローテーションを利用)

上顎臼歯を圧下することで、下顎骨を前上方へ回転させ、前歯部の被蓋を改善する方法です。

この治療では、矯正用アンカースクリューを用いた絶対的固定源が不可欠となります。

適応となる症例

  • 上顎前歯の挺出を避けたい症例
  • ガミースマイルを伴う開咬
  • 下顔面高が大きい骨格性開咬

特徴

  • 顎位の変化を伴うため、顔貌への影響も大きい
  • 適切な圧下量と力のコントロールが重要

前歯の挺出と臼歯の圧下を併用する方法

前歯の挺出と臼歯の圧下を適切に組み合わせる方法です。

多くの症例において、臨床ではこの方法を選択することが多くなります。

  • 過度な前歯挺出を避けられる
  • オートローテーション効果を適度に活用できる
  • 咬合の安定性が高い

症例から考える治療選択のポイント

開咬治療では、

  • 骨格的要因の有無
  • 前歯・歯肉の審美的条件
  • 垂直的顔貌
  • 後戻りリスク

を総合的に評価し、歯の移動量と顎骨回転のバランスを設計することが重要です。


まとめ

下顎骨のオートローテーションを利用した開咬治療は、
歯列だけでなく顎位・顔貌・機能を同時に改善できる有効な治療戦略です。

単純な歯の移動ではなく、
三次元的な咬合設計と垂直的コントロールが求められるため、
症例ごとに慎重な診断と治療計画が必要となります。


参考文献

Kyunam KimK, et al.
Prediction of mandibular movement and its center of rotation for nonsurgical correction of anterior open bite via maxillary molar intrusion.
The Angle Orthodontist. 2018;88(5):538–544.
doi:10.2319/102317-714.1


戻る